実例!若い世代の雇用&DX『60分』第4回 株式会社 広島メタルワーク〜前編〜

津田製作所ブログの連載企画

『60分』


弊社 代表取締役 津田義明が、

経営者や今話題の方に、
60分間の限られた時間の中で
インタビューにお答えいただきます。


第4回目は
株式会社 広島メタルワーク 代表取締役 前田 啓太郎(まえだ けいたろう)さんです。
前編は、メタルワークさんで成功されている事例2つについての深掘りをメインにお届けします。

毎年若い世代を雇用できるわけやその考え方
自社でも導入されているいるDX化の本当の意味

実際に経験されているからこその体験談と想いを、ぜひご覧ください!

常に若い世代を雇用できている理由

津田:「前田社長と出会ってもう15年くらいになりますかね。
その当時ね、『経営ってしんどいよね。前田社長はどうして会社やるんですか』って聞いたら、
『若い人たちが喜んで働ける場が少ないから、そういう場所を作りたい』って言ってらしたじゃないですか。
私はそういう視点はなくて、会社をやっていくと普通に人は増えていくと思ってたから、
ああ、そういう考え方すごく素敵だなって、印象に残ってるんですよ。」


前田:「それは今も変わってないですよ。」


津田:「若い人たちだって当然年をとっていくわけですが、常に若い方がおられますよね。
私が知っている中小企業で、こういった例はそんなに見たことがないんですよ。
どこも採用に苦労する時代にも関わらず、ここは20代から30代の方が多いじゃないですか。
市内から1時間以上かかる山の中の会社なので、立地がいいわけでもない。
若い人たちが常に集まってくるのは、何か秘訣があるんですか?」


前田:「秘訣はよく分からん。
でも意図的にやったことではあるんですよ。 
部長、課長が一旦役職を降りて、若い子をなるべく上にあげてバックアップする、というのをやったけど、それは失敗。
ものの見事に失敗だったんですけど、失敗かどうかって、10年、20年後に分かるんですよ。
要はね、人材が育たなかった。」


津田:「やっぱり人を育てるってのは難しいんですよね。
だからといってベテランの役職者が居座ってても育たないでしょ?」


前田:「今年は『帰り咲き』なんですよ。教育係として、ペアを組んでもらう。
係長(元上司)が課長を教育してます。
教育っていうか、自分にないところややり方を見習えという話にすると、常に助言することになりますね。」


津田:「現場は現場で役職者がいるんですか?」


前田:「いるんですよ。誰が誰につくっていうのも含めて、全部自分が考える。 
でもね、若い人材を上に引き上げようとした時に考えてた「高齢者」の年代が、
今の時点では変わっちゃってて、まだ働ける年代になってるんですよ。
だから『帰り咲き』が起こった。」


津田:「今年も人は採用されたんですか?」


前田:「中途で3、4名。」


津田:「それはどうやって?」


前田:「リクルート会社の媒体ですね。
今もう考え方は変えてて、定着率を求めることはしてないんですよ。
世の中がリクルートで溢れてるじゃないですか。転職ありき、転職が正、ずっと定着する方が悪になっちゃって。
それなのに無理に、「いやいや定着せんとダメよね。」なんか言っとったら人は来ん。
10人おって3人残ればいいなって思った方が楽しいんかなと。」


津田:「それは入社される時に伝えるんですか?」


前田:「何も言わない。去ってくる人は追わない追わない、もしくはダメなら切る。
そうしないと、企業価値が下がると思うんだよね。」


津田:「でも、2、3年経ってノウハウを持った人が辞めちゃうと、それだけ築いたものがなくなるわけじゃないですか。
それを解決するような、早く育てるような仕組みは何か作ってるんですか?」


前田:「逆にうちは何もできてない人、知らない人を採用してます。
前職で同業は雇ってないんですよ。 経験者はいらない。
根本は、技術としての確立っていうのを思うこともあるけど、
今の子たちはそれを求めてないから、無理に押し付けても入っていかない。
逆に、我々の世代のエゴになる。」


津田:「それ分かる。
我々は見て覚えろって言われた時代じゃないですか。盗め、みたいな。
次の世代がマニュアル世代、マニュアルがないとできませんよって。
で、その次の世代の今はもうマニュアルを見ないんですよね。
興味があることに対しては自分で勉強するけど、興味ないことはいくら言われてもやらない。
そこに合わせてる経営っていうこと?」


前田;「そう変えていってる。
俺らは若いころやっとったけ、お前らもできるよとは言わない。
もうそれ言っちゃうと進まない。」


本当の意味の「DX化」とは

前田:「こないだちょっと面白いことがあって。
製造業をされてる会社に、どうやったらDXが進むか話してほしいって言う話をもらって、
そのコーディネーターの人が
「今いろんな製造業の会社が、DXを使って技術伝承をしようとして奮闘されてるんですよ」って言うんで、
「それいるんですか?」って聞いたんですよ。
俺が思うDXはそうじゃなくて、いかに機械化するかとかいかにソフト化するかなんで、それは違うと思うよって。
そう言ったのには根拠があるんです。
例えばうちらの溶接っていうのは固有技術なんだけど、溶接の技術を覚えろ覚えろって言っても、誰一人ついてこんですよね。


うちに入って3ヶ月くらいの子がいるんですけど、1ヶ月くらい経ったときにもう、ロボットを使えてたんですよ。
だからロボットをやってもらってる。
やってるのは20代の女性なんですよ。10年も20年もかけて得るような技術の溶接を、ロボットでやってしまうわけ。
これを手でやれ、って一生懸命教えるんじゃなくて、ツールをあげるんですよね。」


津田:「どちらかというと溶接ってファジーで手作業のイメージで、
しかも溶接してしまった後にはどれだけ出来がいいかは分からない。
だから、熟練工で経験重ねて、もしくは資格を取ってっていう人が重宝されるっていうイメージなんですよ。
そこへロボットが出てきて、たくさん作るような繰り返し作業が上手だとなってましたが、
少量でもロボットでやるんですね。」


前田:「そうですね。
その子に何を教えたかっていうと、溶接のことは一個も教えてないですよ。
教えたのはロボットの使い方だけ。ちょっとした説明で済んじゃう。 
あれもこれもできなくてもいい。多くを求めない。 


うちの会社に入った人のやりたいことナンバーワンは溶接だけど、辞めるのも溶接の人がナンバーワン。 
でもね、溶接専用工場を見学した人は、溶接したいって言わないんですよ。
プレスやレーザーカットしているエリアの後工程で溶接している人を見て、溶接をやりたいってなる。
座ってやってるから楽?暇?って感じちゃうのかな。
人は何を起点に選択してるか…あんま考えてないんじゃないんですかね。」


津田:「若い人たちが興味を持つ面白いと思わせるような環境を作って、
そこで力をつけてもらうのが良いと。」



前田:「当然、固有技術を伸ばそうとしてるんですよ。
ロボットを使うのは一部のことで、10人に1人は通常の溶接に来てくれとは思ってて。
トータル的に溶接技術が上がっていくことをしなきゃならない。」


津田:「でも、そうは言いながら、やっぱり人を見てるんですね。」


前田「じゃないと…難しいですね。」 

時代の流れに乗って変わりつつあること

津田:「今、車の板金屋さんって、自動運転や安全装置の搭載でぶつからなくなったから、
修理が減って、仕事が減ってきてるんですね。
社長のところも同じ板金っていうカテゴリーですが、何か変わってきてますか?」



前田:「我々がやる板金はね、ちょっと変な方向にいってるとは思います。
以前は切って曲げて溶接っていう、ごく当たり前なことをやってました。
一時多かった半導体業界のフレームの仕事は、メーカーさんが自分のところで作れるからって無くなってたんですが、
最近また、我々のところへ帰ってきてますね。
設備の進化と並行して、製品の要求精度がどんどん厳しくなって、
単純に切った曲げたりでは通用しなくなってきてるんです。」



津田:「設備の進歩とともに、メーカーさんの技術力も上がって、
それまでの課題は解決できるようになったけど、新たな課題解決にてこずっているって感じですかね。」



前田:「そうですね。
ただうちらがやってるメインの板金っていうのは大量生産じゃないんで、
どちらにしても無くなりはしないんですよ。」



津田:「 ちょっと話を戻しますが、ロボットといえば、最近では中国製の協業用ロボットが60万で買えるようなんです。
人間と同じだけの能力が発揮できるとはいかなくても、一回導入すればある程度の年数を動いてくれる。
そのうち人が要らなくなりそうですね。」



前田:「そうなるでしょう。だってこの間、マラソンで二足歩行で走ったんでしょ?
ロボットの時代は来るんじゃないかなと。」









#津田製作所 #金属切削加工 #試作 #開発 #広島 #精密部品 #ものづくり #対談 #60分 #広島メタルワーク #中小企業