見えない精度を、見える努力で支える ― 「20℃」にこだわる理由

私たちが製品を検査する部屋、いわゆる検査室では、
一年を通して室温を20℃に保つように徹底しています。
一見、なんだか快適そうに聞こえるかもしれません。
でも、夏に20℃の部屋で長時間作業するのは実はけっこう寒いのです。
検査スタッフは年中上着が手放せません。
なぜそこまでして20℃にこだわるのか?
それは、「製品の精度は温度に左右される」というシンプルで、とても大切な理由があるからです。

アルミは、温度で伸びる
私たちがよく加工している素材の一つ、アルミ。
アルミは軽くて扱いやすいのですが、熱によって伸び縮みしやすいという特徴があり、
特に当社で多く手掛けているアルミ材の加工では、
温度管理が製品精度を大きく左右します。
というのも、アルミの線膨張係数は23.1×10⁻⁶/℃と非常に高く、鉄の約2倍。
例えば100mmのアルミ部品は、たった5℃の差で0.012mmも伸びる計算になります。
この「わずか0.012mm」を軽視してはいけません。
当社ではピッチ0.01~0.02mmの精度で加工している製品が少なくなく、
温度による膨張は、設計寸法を簡単に超えてしまうリスクがあります。

20℃のための、いくつもの“ひと手間”
温度管理と聞くと「エアコンの設定温度を20℃にすればいいだけ」と思われがちですが、
実際にはもっと細かい工夫をしています。
たとえば……
- 測定前には、製品を半日以上、検査室に置いて温度をなじませる
→「温度慣らし」と呼んでいて、これをやるかどうかで測定値が大きく変わることもあります。 - 室内にはサーキュレーターを2台稼働
→ 空気のムラをなくして、検査室のどこでも同じ温度になるようにしています。 - 測定機器も定期的に校正・補正
→ 環境が変われば、測定機も微妙にズレる可能性があるからです。
こうした一つひとつの作業は、すごく地味です。
でも、正確な測定ができなければ、高精度な加工の意味がありません。
測るという工程があるからこそ、できたものに責任が持てると思っています。


精度を守るのは、人の手と気持ち
検査室での作業は、正直、楽な仕事ではありません。
寒い中でじっと製品に向き合い、慎重に測定を重ねる。
わずかな変化も見逃さず、違和感があれば再確認。
日々その繰り返しです。
でも、誰ひとり手を抜こうとしないのは、
「見えないところにこそ品質が宿る」という想いを、
全員が共有しているからだと思います。
加工の精度、図面通りの寸法、そして製品そのものへの信頼。
それを守るために必要な努力は、けっして派手ではないけれど、
確実にお客様の役に立っていると信じています。
部品精度の裏には、こうした“見えない工程”が存在します。
目に見えない数値の正しさを支えるのは、人の知恵と手間。
私たちはこれからも、そうした“見えない品質”にこだわり、
温度20℃の検査室から安心と信頼を届けていきます。

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