経営者として、会社のことを全て知っておかなきゃいけない『60分』第8回 株式会社 AI-WON 〜後編〜

1億の会社を10個作れたら面白い
津田:「約10年間、事業を順調に拡大されてるなと感じていますが、
サラリーマン当時に思っていたこと考えていたことと、経営者になってから変わったなと思うことはありますか。」
古田:「全て自分が決断と責任を負わなきゃいけないというプレッシャーが半端ないなというのは、やっぱり感じますね笑。
でも、私が営業で外に出ていることも多いので、専務の妻が私の目が届かないところはしっかり支えてくれてます。
経理や総務、あとは工場の責任者としても。」
津田:「今工場があるのは、こちらと河津原、あと名古屋ですか。」
古田:「尾道にも工場があります。」
津田:「1拠点に集中じゃなく工場があるのは、近くにお客さんがおられるからですか?」
古田:「いえ。
僕意外と、お客様が困ってることをどうにかするのが大好物なので笑
尾道に工場があるのはですね。
尾道のお客様が運賃などのコストが大幅に掛かっていたので、
コストダウンとして「社内外注としてうちの敷地で仕事をやってくれませんか」っていう相談をいただいて、作ったからなんです。」
津田:「そういう時、たいてい人手の問題が出てくるじゃないですか。
そこは大丈夫だったんですか?」
古田:「募集をかけたらタイミングよく僕と同年代の経験者が入ってくれて、その子がまた人を引っ張ってきてくれて。
ある意味運がいいんだろうと思います。」
津田:「では以前より社員さんが増えられたんですか?」
古田:「その時は増えたんですけど、その後会社を分社したんです。
それで、今はその子が尾道で社長をしているんです。」
津田:「おー、それは古田社長の中でありなんですか?」
古田:「僕は売上を10億20億するより、1億の会社を10個作れたら面白いと思ってたんです。
経営者が10人いたら、僕に何かがあっても大丈夫な「いろんな人の会社」になるじゃないですか。
その後また一つになるなり、資本を入れてホールディングス化をしてもいいし。
独立したいという本人の自主性に任せればいいかなと思ってるので。
僕についてきて入ってくれた子が何人も経営者になって、自分で給料を決めて、
また従業員を育てるという経験をさせてあげたいなという想いもあります。」
津田:「決断がスピーディーですね。
尾道の工場も何年もかけて出したんでなく、
工場出しませんかって誘われて、じゃあ行こうかってなったら人が入って、
しばらく経って社長をお願い、みたいな」
古田:「でもね、尾道の会社の社長になった本人は、僕が社長って今でも思ってるみたいなんですよ笑。」
津田:「古田社長のほうから「この日から社長やってね」って言うんですか。」
古田:「そうですね。
最初、責任者・工場長として活躍していただいた後ですね。しっかり管理できてるし。
これからも今まで通りの事を社長としてやってくれればいいから、大丈夫でしょって。
仕事は僕が取ってきてお願いするし、もう社長なんでやりたいことはやってもいいよ、って。
ただ、僕の仕事は断らないでね、とは言ってます笑。」

「助けてくれてありがとう。」
津田:「事業拡大のやり方でも、人を大切にされてると感じますね。」
古田:「あとは納期と品質ですかね。
お客さんの言われる納期でやること。
僕が前職でよく言われてたことなんですけど、「品質は誰にも勝るセールスマンだ」と。良い品は勝手に売れてくる。」
津田:「無理な納期って来ませんか?」
古田:「来ますよ笑。
多分、うちの協力会社もうちの従業員も、「古田君、営業をやめさせろ」って思ってるんじゃないですかね、あいつ何でも受けるぞって笑
無茶な納期、いっぱい言われますよ。」
津田:「わかりますよ。
どう計算しても合わない納期ってあるじゃないですか。その時はどうされるんですか?」
古田:「どうしても無理であればお断りしてます。
でも、どうにかしたらできるんじゃないかっていうのは極力受けて、
短納期だと定価の2割増し、3割増しなら可能です、通常価格だったらこの納期じゃないと難しいです、ってお話してます。
高い価格であれば、残業してでもやろうよとか、無理してでもやりましょうってなるんで。
お客様も、ぼったくりだー!とかいうことはなく、「助けてくれてありがとう。」って言ってもらえますしね。」
津田:「許容範囲の価格ということですね。」
古田:「そうでしょうね。
もし間に合わなかったらお客様が違約金を払わなきゃいけなくなるケースもあるし、
店舗什器がオープンに間に合わないとなると大変じゃないですか。
それに、そういうルールにしてたら、お客様から早めに注文してももらえるようになったんですよ。
元請けさんも短納期と通常の価格の差を意識し始めるんでしょうね。」

人を大事にするからこそのAI
津田:「ホームページにある動画には、社員さんも出られてて面白いですね。」
古田:「ああ、あれどこかで変えなきゃいけないんですよ。
みんな独立したりでここから出ていった社員さんになっちゃいましたから笑」
津田:「そうなんですか。
じゃあ人の入れ替わりは多いんですか?」
古田:「尾道の工場で働いてる人もいれば、別の会社で働いてる人もいますね。
元々、僕に慕ってついてきてくれた子たちなんです。」
津田:「今までのお話の中で人を大事にされてるのが分かりましたが、
最近は、AIというが流行ってきてるというか。
AIを今まで意識されたことはありますか。」
古田:「そこまでは思ってはなかったですね。
10年前くらいに、AIじゃなくてIOT化ってあったじゃないですか。
だからIOT化していかなきゃいけないな、という思いはあったんですけど。
AIってなった時は、「愛からいただいて恩を返す、うちAI化してるじゃん。俺持ってるな」って、言ってましたけど笑
はっきり言えば、製造業って人が集まらない時代になってきたじゃないですか。
これは設立前からですけど、繰り返し業務なんかの自動的な仕事って、
ロボット化や自動化にしていかないと、もう生き残れないって当初から思ってました。
私たち従業員、人間は、ですね、労働的な仕事をやれるようにならないとって、従業員にもよく言ってたんです。
ただ、設立したばっかりの会社なので、そういうことをするにはまず原資がいる笑。
なので、まだできていないのが心残りの部分ではあるんですよ。
ちょうど今10年目で節目なので、11年から20年目にかけて、自動化していきたいですね。
来年の春、自動で投入して自動で作れるっていう機械を導入をする予定なんですけど、
それを皮切りにしたいなと思ってます。
この工場で働いてる人はみんな女性なんですよ。
女性はどちらかというと力仕事が苦手じゃないですか。
だから機械にやってもらおうと。」

知らないと責任も取れないし、決断もできない
津田:「皆さんにお聞きしてるんですけど、古田社長が思われる、中小企業にとって必要なことって何でしょう。
経営者にとって、何が要るでしょうか。」
古田:「経営者として、その会社のことを全て知っておかなきゃいけないとは思ってます。
社員のこと、商品何が動いてるのかとか、今日は何を生産してるか、あとはそれこそ機械のこと、財務・経営といった部分も含めて、経営者としては知っておかなきゃいけないっていうふうに節に思っています。
何でそう思うかというと、僕も経営者の方からお話聞く機会が多いんですが、
なかなか全部を知ってるっていう経営者って、いらっしゃらないなと。
僕の中ではまず知ることなんです。
あとは「想い」ですかね。
会社をこうしたいというか、夢というか。
夢を語るときに目を輝かせない人はいないと思うんですよ。」
津田:「古田社長は社員さんに夢を語ることはありますか?」
古田:「ああいうふうにしたい、こういうふうにしたいと言ってるつもりではあるんですけど。」
津田:「そうは言っても、会社の規模が徐々に大きくなってくると、全てを知れないかもしれないじゃないですか。
そういう点で、分社化とか社長をたくさん作るっていうのはいいかもしれないですね。
そういう想いから今に至っているのかもしれないですね。」
古田:「そうですね。
限界があるんで、人に任せていくっていうのは勿論しているんですけど、
それでもやっぱり、知らないと責任も取れないし、決断もできないっていうことですよね。」


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