対談『60分』第1回 光和電気株式会社〜後編〜

対談『60分』第1回〜後編〜
前編からの続きになります。
まだお読みになってない方は、
新企画!対談『60分』第1回光和電気株式会社〜前編〜
ぜひこちらから先にご覧ください!
中小企業の後継者問題
細土:「鉄工所のジャンルが広いということは、
裏を返せばいろんな可能性が無限にあるということでは。
例えば、鉄板でできん部分は樹脂を曲げて作るような、一体造形じゃないやり方とか。
大企業ではコストがかかって敬遠することも、
中小企業だから技術開発できるようなことがあるじゃないですか。」
津田:「そういったところに取り組むとして、
後継者がいてくれたらまた違うんですけど。」
細土:「後継者問題はどうするか、それは永遠のテーマですよね、中小企業は。
僕もスタート時点では話すのが上手くなく、
苦手なところを克服して、周りの優秀な社長を側で見て学んで、
なんとか這い上がってここまで来てる。
どこの部分を継承して、好きにやっていいよという部分はどう設定するか。
自分のほとんど全部を継承してほしいとなると、難しいしできんと思うんで。
どう整理するかですね。」
津田:「うちは現場の方は、後継者ができたらサポートするという話ももらっとるんで、
そういった社内環境は整備しつつあるんですけどね。
ただ、いざ『やりたいことやれば』とは言っても、資金がなかったりすることもあり得る。」
細土:「後継者が今までの路線じゃない方へ曲げたいという考えを持っている可能性もあるじゃないですか。
その時に、柔軟にやってみようという文化が社内にあるかどうかもありますよね。
そのうえでビジョン、夢に向かって走る設定をして、
もし資金の問題が出てきたら、それは本人が考えるべき。
お金足りなかったらここを歩けというのは違うと思うんで。」
津田:「結構厳しい考え方を持っとってですね。」
細土:「僕、物がない時代に育っとるでしょ。
おもちゃ屋さんにラジコンがあっても、あれは見ちゃいけんもんじゃと思いよったんですよ。
今は2、3千円のもんだから、『今度ブルーが欲しいからもう一個買って』とか言って、何台も買ってもらうじゃないですか。
自分の時と比べて羨ましいとか言うんじゃなくて、あれがまずいような気がします。
ハングリーな環境で育った人ほど、より大きく伸びる要素があるんだと。」
津田:「海外からの実習生とか目がキラキラしてて、すごいハングリー精神で来てますもんね。」
細土:「 僕がベトナムやタイに行った時、目って人によって輝きが違うんだなと。
貧しい環境の中でもすごく輝いてて、あれはびっくりしましたね。
日本の場合、放物線でいうと、頂点来たら落ちるでしょ。
どこまで下って、また上がるんか。
下る時は下る時の中小企業の生き様みたいなのがあるはずなんで、
それをちゃんと見つけられて、生き延びたらまた景気が良くなってくる。
でも景気関係なく、儲けられる分野も、やりたいことも加味してバランス取りながら、
社員さんとか家族の生活も背負わないといけないわけだからね。」
津田:「まず利益を出さんことにはね。」
細土:「そこにはいろいろなやり方や方法があって、
一口で正解はないとは思うんですけどね。」

理念が耕す畑から生まれたもの
細土:「会社の考え方でいうと、働きやすい環境を作っていくのが社長の仕事だと思うけど。」
津田:「それはね、言葉ではわかってるんですよ。
頭の中には常にあるんですけど、絵としてそうならないこともあって。
多分、中小企業の経営者はみんな思ってるはずなんですよ。
私も色々学びましたし、ある程度の知識っていうのは入ってくるじゃないですか。
できるだけ良い会社にしよう、良い環境に整えよう、みたいなスローガンもあるじゃないですか。
でも、必ずしもそうならないじゃないですか。何がコツなのかなと思って。」
細土:「僕の所属している会での同期で、仲良くなったタクシー会社の社長さんがいるんですが、
彼は社内に理念をとことんとことんずっと落とし込んで、一筋なんですよ。
割と失敗ばっかりやってたんですが、
コロナ禍のあたりから、ガラッと逆転してね。
理念で耕した畑に、良い人材が生まれてたんです。」
津田:「コロナ禍から?」
細土:「そう。
知り合いから、タクシー運転手がみんな運搬したがらなくなって困っとるって聞いて。
でもね、彼の会社の運転手だけが、『いや、社長やりましょうよ』って。
人の、社会の役に立つという理念が浸透してたんですね。
それとね。
どこも人材がおらんでしょ、募集しても誰も来やせん。
でもその会社にはね、20代が10人か15人か入ってきとる。
次の社長候補の息子さんたちが、
会社の未来を伸ばす方向を、こういうふうな感じだから、こういう人を募集しますという、
そこでも理念を発信して、求人にも成功した。」
津田:「息子さんたちはおいくつくらいですか?」
細土:まだ30くらいかな。」
津田:「若い!」
細土:「採用ページの一番上にまず気になる給料のことをしっかり、
その次に理念について噛み砕いて書いてあるから、分かりやすい。
これらは息子さんたちが主となって考えとる。
こういった流れになってから、人材への運が向いてきた。」

ものづくりや仕事に喜びを感じて欲しい
細土:「我々世代の常識と今の常識というのは、
真反対にしたらちょうどピッタリ当てはまるくらいなんじゃないかと、感じることがありますよ。
僕らは志やビジョンみたいな、
どういう会社にしたいとか、こういう目標に向かって真っ直ぐに走っていきたいとか、熱を持ってたよね。
そんな今の10代20代が、60歳になるまでにどう伸びるかは分からん。
僕はもうサポートしてもらう位置だけど、
若い人たちのお尻を叩いて、一生懸命に成長していく姿を見るのは楽しいね。
だからもっともっと伸び伸びとやってもらいたい。」
津田:「ゆるいというか、まず、夢がないのかもですね。
そもそも今は、コンプライアンスで面接でも聞いちゃいけないことばっかり。
尊敬してる人は誰ですか、とかもいけないんですよ。」
細土:「うちの面接というか判断は、作業してもらうんですよ。
かしこまって面接すると、前もって用意してきた答えを言うだけで、全然参考にならん。
4回路くらいの分電盤のサンプルと道具だけ置いといて、これを見ながら組んでくださいと。
それで時々声かけて、話しながら。
そうして簡単な作業をしてもらうことによって、ある程度の性格や地の部分が垣間見れる。
この人ええなって僕が思っても、作業に立ち会った社員全員に、どう思う?って聞く。
ええんじゃないかってみんなの答えが揃ったら、合格。
誰か一人でも『うーん』って言ったら、じゃあやめとこうね、って。 」
津田:「でも、たくさん応募が来ればそういう選び方もできるけど、
この人もダメ、あの人もダメってなったら誰も入れれんじゃないですか。」
細土:「もしそうなれば、新卒や若手じゃなくてもいい。
40代以降の層から同じようにして選ぶのも、パートさんで試してもいい。
正社員になったらすごい一生懸命働きますからね。
40代、50代、60代は残業にも進んで手を挙げてくれるから、本当は僕一番好きなのよ。
だけどそればっかりだとさすがに、10年20年後に困ってくる。
いろいろ考えて、若い人の雇用にもチャレンジするしかないんじゃない、中小企業は。」
津田:「なるほど。言葉にすると、そうですねって思いますね。
ただ一概に若い人とかっていうのは無理ですもんね。理想ばっかり追っかけてもね。」
細土:「それとね、もう一つは女性。
女性の技術者を探して、働きませんか、みたいな。」
津田:「今何人かおられるんですか。」
細土:「良いタイミングで来てくれて、今は1名。
昔、CADのオペレーターで入った女の子もいたんだけど、
自分が依頼された図面が形になったものが、たまたま家の近所に設置されることになって。
家族で見に行ったんだ、って喜んでたね。
ものづくりの良さにそういうところがあるでしょ。」
津田:「それは嬉しいですね。
私も、ほとんどうちがエンジンの開発に携わらせてもらってるメーカーの車に載ってます。
それが上手くいったってなるとやっぱり嬉しいですもんね。」
細土:「そういう意味での製造をする喜びがあるんで、 男女どちらもいい。
女性の握力や筋力が足りんと言うなら、サポートできるような工具を考えて作ってあげて、
難しいならこれを使いなさい、とやっていく方がいい。」

笑顔・スマイルを職場に
津田:「最後に、細土さんの人として大切にしていることと、座右の名を教えてください。」
細土:「人として大事なことというのは、相手の嫌がることを極力しないというのが一つですよね。
座右の銘は、笑顔と素直な心。
これはISOの品質方針であるんだけど。
常に笑顔が溢れる職場というのは、ギスギスせんし、
ピュアな心で仕事に向き合って欲しいなというのがありますね。」
津田:「そのためにはやっぱり職場環境を良くせんといけんですよね。
うちの理念もスマイルカンパニーですからね。」
細土:「会社に関わっている人が自分も含めてみんな幸せで、
お金をしっかり稼げるのが一番いいわけじゃないですか。
そのためにどうするかだから。」
津田:「利益を上げてくれるのは社員さんですしね。
やりがいを感じて、なんなら毎日仕事が楽しみになるような会社…言い過ぎですかね。
そんな会社にするために、私たちはずっと勉強し続けなければいけませんね。
あっというまに60分が経ちましたね。
本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。」
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