自分が営業できる”断トツ”の製品をつくろう 『60分』第9回 株式会社宇根鉄工所 〜後編〜

『60分』第9回目
株式会社 宇根鉄工所 代表取締役 宇根 利典(うね かずのり)さん
との60分対談、前編からの続きになります。
「キャベツ作りも考えた。でも、自分たちの技術で勝負しようと。」『60分』第9回 株式会社 宇根鉄工所 〜前編〜
ぜひ、前編から先にご覧ください!
何を言ったらいいか分からなくて、建物に入れなかった
津田:「ここまで来るのにはもちろんご苦労もあったと思いますが、自社製品には夢があるなって感じるんですよ。
いつもうちも自社製品が欲しいと思ってるんで、羨ましいです。
これまでに困ったり、行き詰まったりしたエピソードはありますか?」
宇根:「 開発に苦労はしたんだけど、苦しかった思い出はあんまりなくて。
それ以前のがしんどかったです。
代替わりして社長になるっていうことは、結局会社を壊さにゃいけんわけじゃないですか。
自分が仕事を取ってくることがどうしても必要になるんですけど、僕はゼネコンでは現場監督やっとって、営業したことがなかったんです。
会社に戻った当時、公共工事の下水の営業担当になったんですけど、よう売らんかったんですよ。」
津田:「それはリーマンショックの影響で?」
宇根:「そうじゃなくて、性格的に。
当時の営業って、人間関係が大きかったんですよ。
『この製品がこうで、技術がこうなので、買ってください』じゃなくて、
会社と役所の付き合いや、個人的な繋がりで仕事を取っていくわけです。
それが性に合わなくて。
1回目に「仕事ないですか」って聞いたら「ないよ」って言われて、
その次も、またその次の時も、同じだった。
もう「何を言ったらいいか分からん」って、それからしばらく、役所の前まで行っても建物の中に入れん時期があってね。
それで、「製品自体『これが欲しい』と言われるようなものじゃないと、俺には売れんな」と思ったんです。
だったら“断トツの製品”を作ろう。
じゃあ“断トツ”ってなんだっていうのは、ずっと自問自答したんですよ。
『性能が突き抜けてて、他にない製品じゃないといけん。
人がやらんことをしよう。
難しいことはみんなやめていくから、難しいことをやるか』と。」

かけたハシゴと選んだ道への覚悟
宇根: 「最初の製品開発の時、まだ物が完成していない段階で「水圧でやります!」ってお客さんに宣言して、受注を決めてしまったんです(笑)。
でも、そうやってゴールがある方が物事が進む。
ゲート設計って規格が決まっとるんですよ。
だから会社に、新しい物を引っ張ってくる、誰かに相談して品物にする、そういう体制がなかったんです。
それを変えていくのに苦労しました。
あれができん、これができんってなるから、「できる業者さんを探してみるよ」とか、
とにかく”はしごをかける”ことを一生懸命やりました。
「こんなことが起こりそう、こんな要求が出そう」と思ったら、開発する人間がくじけないように、先回りして調べておきました。」
津田:「自分じゃない人に営業をやってもらおう、とは考えなかったんですか?」
宇根:「売る力がないと、おんぶに抱っこになるじゃないですか。
今もいっぱいできんことはあるんですけど、根幹に関わるところは自分でできんかなと思ってて。
そこをしない方法は考えなかったです。」
津田:「苦しかったら逃げたくなるじゃないですか、普通は。」
宇根:「社長になるっていう選択をする段階で、覚悟したんですよね。
失敗するかもしれんけど、人のせいにしたくない。
『自分の選んだ道だからしゃあないね』と思えないうちは会社に帰れんと思ってたんで、決めた時点で腹はくくってました。」




中小企業のものづくりの強みとは
津田:「今、日本人が取ってるノーベル賞は、基礎研究なんですよね。
誰にも評価されなくても、けなされても、一生懸命やってきた人たちが、今やっと日の目を見てる。
でも日本はその基礎研究への投資をやめていってるから、もう少ししたら日本からはノーベル賞が出なくなるだろうって言われてます。
そこで初めて『あれ大事だったんだ』って気づくんでしょうね。
我々も同じなんですよ。
地道に積み重ねてきた技術があるから、いいものを安く早く作れる。
最新設備を入れてボタン一つで作れるようにしても、基礎がなければトラブルに対処できない。
でも基礎だけやってても会社は続かない。技術と経営、両方のバランスを取らないと。
だから鉄工所って『やってちゃいけない』商売なんですよ(笑)
例えば土地代、建物代、設備代、全部製品価格に載せなきゃやっていかれない。
人件費は大手並みに出せって言われる。出したいですよ、もちろん。
でもそうなると大手に勝てませんよね。
だから製造だけじゃ厳しくて、物を仕入れて売る商社機能を持つ会社も増えてきてます。
でもそうなると、儲からないものづくりには、力を入れられなくなってくるんですよね。
自社製品があるかどうかで、やっぱり違ってくると思うんです。
技術を磨き続けていないと、製品そのものが作れないですから。
そういった意味では、宇根さんはアドバンテージが高いところにおられるんじゃないかですかね。」
宇根:「中小企業の強みは、物を考えるということだと思うんですよ。
今の風潮って『これ渡したら誰でもできるようにして』って感じで。
臨機応変じゃなくて、注意事項も何もかも書いたマニュアルを見たらわかるようにしといて、って言われる。
単品生産なのに、カスタマイズ製品なのに、そこに規格性を求めるわけですよ。
それって全部の仕事に影響してくる。
でも、だから中小が大手に勝負できるんです。量産品の勝負になったら、100%負けますから。
岩陰からピッて狙い撃ちするみたいな(笑)、ニッチなところで勝負する。
他の人がやらないところをやるってことですよね。そんなのばっかり探してます。」

いかに得意を生かした市場を作れるか
津田:「もう一部答えはもらったかもしれないですけど、我々のような中小企業の経営者に 何が必要なのか。
もしくはその会社に何が必要だと思われますか?」
宇根:「とにかく事業継承、一番悩みなのはそこですけど…(それはそれとして)
やっぱり考えるってことが絶対的にいると思うんです。
「 1+1が2になりますよ」っていう、いわゆる事務的な発想で機械的に物を済まそうとすると、中小企業は大手に飲まれるんで。
どこにどんだけ隙間があって、そこに入って自分たちの得意を生かしていかに市場を作れるか、みたいなところを掘る。
それをずっとやれる集団じゃないといかんと思うんですよ。
まず観察して、どこにそういうものがあるか探すことが一つ。
それを今度は形にできるかどうかがもう一つ。
見つける作業とそれを形にする作業、両方の力が要ります。」
津田:「それは社長が率先してやるべきことですか?
もしかしたら、見つける作業はそうかもしれないですが、そのあとはどうなんでしょう?
宇根さんは全部自分でしようとされてるように見えるんですが。」
宇根:「それね、よく言われるんですよ( 笑)
ある意味人が育たない典型なのかもしれないですけど。
やっぱり人に振ることも大事なんですよね 。
自分がやったほうが早いと思うことも周りに振って、考える習慣をつけてもらう。
やり方を一つずつ継承していく。
それが自分のこれから10年の課題なのかもしれないですね。
人づくりってそういうことなんかもしれんですね 。
言われてやるんじゃなくて、『何をやるとベストな回答が出るのかしら』と考える集団であって欲しいんですよね。
楽しみながらね 。やらされるんじゃなくて、『こういうことができるね』って。」
津田:「でも宇根さんは本当に楽しそうというか、夢があるというか。
以前から悩んでる感じはなかったですけど。」
宇根:「そうですね。命までは取られんし。」
津田:「当時もそう言われてましたね(笑)」
株式会社宇根鉄工所 ホームページ https://i-une.co.jp/
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